[1]通学路の上で・・・
寒さも少し和らいできたのか、
お決まりになってたキャメルのダッフルコートを着なくてもよくなってた。
それでも吹く風はまだまだ寒くて。
お決まりの赤いマフラーはそのままに、通い慣れた学校までの道を歩く。
ポケットに手をつっこみ歩く。
肩に慣れた重さは、いつの間になくなったのか。
あぁ、入試前に最後の訪問して以来かな?
入試っていってもエスカレーターに乗ったオレには、随分前にとっくに終わったもの。
その後暇だったわけだから、いつでも行けたのは確か。
でも、一度も行かなかったのは何故だろう?
あの馴染みの場所に・・・。
・・・思い出すからだろうか?
オレの頭の中でテニスと直結してる彼の人を。
入試中は会わないことにしていた。
互いに足を引っ張るかもということで。
オレの方は早く終わった。
彼の人はギリギリまで試験があると言っていた。
会わない日が続いた。
最初は彼の人の為と我慢した。
そのうち会いたくてたまらなくなった。
そのうち・・・会わなくても平気になってた。
いい機会かもしれない。
そんなコトを考えだしたのは、卒業式間近のある日。
いつも考えないようにしてた。
そんなコトまで考えられるほど感情が麻痺していたのかもしれない。
彼との“別れ”を意識し出したのは、そんな寒さ和らぐ、
赤いマフラーをして登校中の通学路の上だった。
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